7月4日に、経済産業省から「アートと経済社会について考える研究会 報告書」が公開されました。経済産業省のプレスリリースによると、「文化芸術は経済社会を支える主要なエンジンであるとの認識が世界的に共有されているが、日本におけるアート市場規模はまだまだ小さいなど、文化芸術と実経済社会との間には隔たりがある」としたうえで、「アートの持つ経済産業的意義を確認」しつつ、「アートと経済社会が互いに支え合い発展していくようなエコシステムの構築」について検討しています。そもそも行政において通常文化芸術の振興を司っているのは文化庁であり、経済産業の側からの視点でアートを分析すること自体が、行政としての新たな試みと言えます。
実際の報告書を確認すると、テーマにふさわしく、行政の報告書とは思えないポップ、カラフル、自由な体裁が目を引きます。企業や地域でのアート活用、創造的な社会の実現のためにアートを活用すること、テクノロジーを用いたアートの可能性などが論じられていますが、アートを「供給」するアーティスト側でなく、アートを「需要」する側(企業、地域など)を起点とする議論がこれだけのボリュームで読めるものは、今まであまりなかったように思われ、興味深い内容となっています。
また、ビジネスの現場においては近年、「アート思考」が注目を集めるようになっています。「デザイン思考」がデザイナーのものの見方・考え方を問題解決に応用した思考法であるように、アート思考は現代アーティストのものの見方・考え方を一般の人が活用できるようにモデル化した思考法であるとされます。アートの力やアーティストのクリエイティビティをビジネスにおけるイノベーションに活用したい、という近年の風潮も、今回の報告書のような検討の動きを後押ししたのでしょう。
別添資料として「アート関係で活用し得る経済産業省等の支援策の例」が紹介されていますが、ここにある経済産業省の支援策は、「ものづくり補助金」「事業再構築補助金」といった、一般の事業者向けの既存の策ばかりです。今後、より直接的にアートの需要を喚起するような支援策が打ち出されるようになるのか、その点にも注目したいと思います。 |